【現状】
現状の農業では、1反(約330㎡)の農地から収益できる純利益は米作の場合、収穫から肥料・農薬・農業機器のローン・維持費を差し引くと年間10万円程度のレベルです。最低の生活維持レベルを年間300万円とすると、最低でも10反(3300㎡)の農地が必要となります。
米以外の野菜類を生産した場合は、もっと収益率は高くなりますが、作業量から複数の人員が必要となります。また、田哺をそのまま畑に転用することが難しい土質等もあり、単純な計算では成り立ちません。
この問題は長年放置され、解決の方向もしっかりと示されてはいません。
主な生産の非効率化の原因の多くは周辺の市街化にあり、市街化により農地の規模の縮小・日照・風通しの問題で生産効率は大きく下がりました。
生産効率を上げるためには、農地の大規模化が必須条件となります。
しかしながら、現在の制度が逆にこの大規模化を阻害している事は否めません。
【行政上の問題】
第1に、生産緑地制度。この制度は、大都市圏の市街化区域内に存する農地の宅地並み課税の措置がとられたとき、農地保護の目的で30年間の農業生産の継続を条件に農地課税率を維持するというものでした。
農家は期限までに農地として継続するか、市街地としての有効利用を選択する必要に迫られ、「とりあえず生産緑地」が都市圏の方々に誕生しました。
後にこの制度が弊害となり、生産緑地の指定を受けた農地が市街化促進を妨げ、官製乱開発の原因となりました。また、身体上の理由などで生産緑地指定から外れ周辺が市街化したため、生産緑地のまま取り残された農地は、小規模化・農薬・騒音・日照・通風の環境が悪化し、極めて生産性の低い農地となっています。
第2に、農地の相続税猶予制度。これは、農家で相続が発生したとき、多額の相続税を免除するため条件付きで相続税を猶予する制度です。
つまり、相続税を支払わない代わりに、農業生産を生涯継続することが条件となります。したがって途中で農業生産を中止した場合、それまでの猶予額と利子税を一度に支払わなければならない事態となります。このことが、特定の農地に農家を釘付けすることとなり、農地規模の縮小化に拍車をかけました。
相続税猶予は一種の抵当権であり、これを移転することは認められていますが、ここにも大きな条件があります。
①新たに取得する農地は市街化調整区域もしくは生産緑地指定を受けた農地(不思議なことに税務署ごとに差異がある場合があります)に限られること。
②売却する既存農地の売却金額と同等かそれ以上の価額で新農地を取得すること。
実務的には非常に困難が伴います。売却する金額と同等の金額で市街化調整区域の農地を買い求めるわけですから、相当の面積となり、売り手が見つからないのが現状です。
その打開案として、(ここまでお読みいただいた方は、うすうす打開策がお気づきと思いますが)上記の背景を踏まえ、今後の課題として模索して行こうと考えています。
(投稿者 Lotus)
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